「肩こりは肩だけが原因じゃない！理学療法士が教えるピラティスでの根本改善法」

肩こりはなぜ起こるのか？実は肩だけの問題ではない

「デスクワークをすると肩がガチガチ」「マッサージに行ってもすぐ戻る」――多くの人が抱える悩みが肩こりです。
ところが、理学療法士の視点から見ると、肩こりの原因は肩そのものだけではありません。

肩こりの背景には、姿勢・呼吸・肩甲骨の動きといった「体全体のバランスの崩れ」が深く関わっています。特に現代人に多いのが、頭が前に出る「ストレートネック」や、背中が丸まった「猫背姿勢」。これらの状態では、肩の筋肉が常に緊張状態となり、血流が悪くなることで痛みやだるさを感じやすくなります。

ストレートネックによる首・肩の負担
　頭の重さは約5kg。その頭が前に出ると、首から肩の筋肉（特に僧帽筋上部）が過剰に働き、こりや痛みを引き起こします。
胸椎の硬さ
　本来、胸椎はしなやかに動くことで肩甲骨や腕の動きを助けます。しかし背中が固まると肩甲骨がスムーズに動けず、肩に負担が集中します。
呼吸の浅さ
　ストレスや姿勢不良で呼吸が浅くなると、首の筋肉（斜角筋など）が過剰に働き、肩こりが悪化します。
インナーマッスルの機能低下
　前鋸筋や下部僧帽筋など、本来肩甲骨を安定させる筋肉が使えないと、表層の筋肉が頑張りすぎてしまいます。

理学療法士の臨床でも注目されるのが「ピラティスの効果」です。

姿勢をニュートラルに戻せる
骨盤・背骨の正しい位置を学ぶことで、肩や首への余計な負担を減らせます。
胸式呼吸で肋骨が動く
ピラティス特有の呼吸で肋骨がしっかり広がると、首の筋肉が呼吸で酷使されず、肩の緊張がやわらぎます。
肩甲骨の安定性を高める
インナーマッスルを使う練習を通して、肩甲骨がスムーズに動き、肩の余計なこりを防ぎます。
全身のつながりを整える
ピラティスは腕だけ、肩だけを動かすのではなく、体幹から腕につながる「全身の連動性」を重視。これにより、肩の筋肉が単独で頑張る状態を解消します。

ここにピラティスの「姿勢改善」や「呼吸の改善」を組み合わせることで、根本的な変化が期待できるのです。

理学療法士の指導を受けながら行えば、無理なく安全に肩こり改善に取り組むことができます。

肩こりは「肩の筋肉が悪い」のではなく、「姿勢・呼吸・肩甲骨の動き」という体全体のバランスの乱れから起こることが多いです。

ピラティスは、呼吸・姿勢・筋肉の使い方を整えることで、根本から肩こり改善をサポートできるエクササイズ。理学療法士の知識と組み合わせることで、安全性と効果がさらに高まります。

「マッサージに頼らず、自分で体を整えられる」
そんなセルフケア習慣として、ピラティスは肩こりに悩む多くの人におすすめです。

佐藤健一ほか. “頚部痛・肩こりと姿勢異常の関連.” 日本整形外科スポーツ医学会雑誌 39.2 (2019): 87-94.
Cagnie, B., et al. “Association between work-related factors and the prevalence of neck/shoulder pain among office workers.” International Journal of Occupational Medicine and Environmental Health 20.3 (2007): 269–279.
Wells, C., Kolt, G. S., & Bialocerkowski, A. “Defining Pilates exercise: A systematic review.” Complementary Therapies in Medicine 20.4 (2012): 253–262.
Cruz-Ferreira, A., et al. “A systematic review of the effects of Pilates method of exercise in healthy people.” Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 92.12 (2011): 2071–2081.
Smith, J. A., et al. “The effectiveness of Pilates-based exercise in treating people with chronic neck pain: a randomized controlled trial.” Clinical Rehabilitation 28.5 (2014): 471–480.