クライミングをしていると、「あの小さなジブス(フットホールド)に乗れない…」ってこと、ありますよね。
足を置いた瞬間にズルッと滑ったり、指でつかもうとして力みすぎて落ちたり。
でも実はあの「乗れない感覚」、筋力不足というよりも、足の指とアーチの使い方に問題があることが多いんです。



ジブスで生きるのは“足趾とアーチ”
ジブスは接地面が非常に小さいため、足裏のどこに体重を乗せているかが明暗を分けます。
足の中でも特に重要なのが、母趾球から足の指先にかけての領域。
ここには姿勢を支えるための細かな筋肉がたくさんあります。
- 母趾屈筋群(長母趾屈筋・短母趾屈筋)
- 足趾屈筋群(長趾屈筋・短趾屈筋)
- 母趾内転筋や虫様筋(アーチを安定化)
これらがしっかり働くと、足裏がホールドを“吸い付くように”感じ取れます。
逆にアーチが潰れてしまうと、足趾が寝てしまい、接地の微調整ができなくなる。
その結果、ジブスの上でふらついたり、力んで足首まで硬くなったりします。
アーチは「土台」だけでなく「センサー」
多くの人はアーチを「衝撃を吸収するクッション」と考えていますが、それだけではありません。
アーチは、足のセンサーでもあります。
足の裏には無数の感覚受容器があり、体重のかかり具合や地面の傾きを常に脳へフィードバックしています。
この情報をもとに、脳が「どれくらい力を入れるか」「どの方向に押すか」を判断します。
つまり、アーチがしっかり機能しているほど、**足は“賢くなる”**んです。
そしてその知性こそ、ジブスのような不安定な場所で立つときに必要な能力です。
足の知性が生む“軽やかな立ち方”
上手なクライマーの足元を観察してみると、驚くほど力みがありません。
足趾をギュッと握るわけでもなく、かといってだらんと置いているわけでもない。
まるで足の裏が呼吸しているかのように、微妙に動いているんです。
この状態を作るには、
- 体幹が安定していること
- 足趾とアーチが連動していること
の2つが欠かせません。
ここで役立つのが、ピラティスの考え方です。
ピラティスは“体幹と末端のつながり”を整える
ピラティスでは「体幹の安定(コア)」と「四肢の自由な動き」をセットでトレーニングします。
つまり、胴体が安定していればいるほど、手足はしなやかに動けるという考え方です。
この原理は、まさにクライミングにも当てはまります。
ジブスの上でバランスを取るには、足趾だけを頑張らせるのではなく、
体幹の安定を基盤に、足裏の細かな動きを引き出す必要があります。
ピラティスの中では、ショートフット(Short Foot)などのエクササイズを通じて、
「足アーチを引き上げながら体幹とつなぐ」動きが自然と身につきます。
これにより、足趾で地面を感じ取るセンサーが研ぎ澄まされ、
ジブスに乗ったときも“ピタッ”と安定する感覚が出てきます。
ピラティスで鍛えられる“ジブス能力”
ピラティスを続けることで、次のような変化が出てくる人が多いです👇
| 能力 | ピラティスで得られる効果 |
|---|---|
| 足趾の分離・操作力 | トーリフトや足趾コントロール練習で、独立した動きが可能に |
| アーチの保持力 | 内在筋を活性化して、足底からの支えが強化 |
| 荷重感覚の精度 | グラウディング(接地感)を高めることで、細かな重心調整が可能に |
| コアとの連動 | 足裏と骨盤底筋群・腹横筋の連動で、全身のバランスが整う |
クライマーの中でも「ピラティスを始めてから足の感覚が変わった」という声は多く、
足裏のセンサーが目覚めることで、
「小さなホールドでも安心して立てる」ようになるケースが本当に多いです。
💡まとめ:ジブスに強い人は“足裏が賢い”
ジブスでバランスを取るのは、単なる筋力勝負ではありません。
足の指がしなやかに動き、アーチがしっかり張り、
その情報が体幹までスムーズに伝わる——
そんな全身の連動があってこそ、あの小さなホールドに立てるのです。
ピラティスはまさに、その連動を整えるためのトレーニング。
足裏を感じながら体を動かすことで、「足から登る」という新しい感覚を手に入れられます。
ジブスに強くなるには、“足の知性”を育てること。
そしてその最短ルートが、ピラティスなんです。
📚参考文献
- Kelly, L. A., et al. (2018). Intrinsic foot muscles contribute to elastic energy storage and return in the human foot. J Exp Biol.
- McKeon, P. O., & Fourchet, F. (2015). Freeing the foot: integrating the foot core system into rehabilitation for lower extremity injuries. Br J Sports Med.
- Cè, E., et al. (2021). The role of the intrinsic foot muscles in climbing performance. Sports Biomechanics.



コメント