カイホロードシスとは?理学療法士が“反り腰の正体”をわかりやすく解説

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「反り腰です」と言われた経験、ありませんか?
腰が反って見える姿勢は、ピラティスや整体、整形外科でもよく話題になります。
でも実は「反り腰」にも種類があり、その中でも理学療法的に注目すべきなのが**カイホロードシス(Kypholordotic posture)**です。

単なる見た目のクセではなく、筋バランス・骨盤・胸郭・脊柱の関係が崩れた結果として生じる「パターン化された姿勢」です。
この記事では、理学療法士の視点からカイホロードシスの特徴・原因・評価・改善の方向性を解説します。


はじめに

カイホロードシスは「胸椎の過度な後弯(kyphosis)」と「腰椎の過前弯(lordosis)」が組み合わさった姿勢異常で、
骨盤前傾・胸郭後傾・頭部前方位という連鎖的なアライメント崩れが特徴です。
筋バランスの乱れ(腸腰筋や脊柱起立筋の短縮、腹筋群や臀筋の弱化)が主な背景にあり、
腰痛・姿勢不良・呼吸制限などを引き起こすことがあります。


カイホロードシスとは??

① 姿勢の特徴

カイホロードシスは、Kendallら(2005)の姿勢分類に基づき、次の特徴を示します。

  • 骨盤前傾(anterior pelvic tilt)
  • 腰椎前弯の増強(lumbar hyperlordosis)
  • 胸椎後弯の増強(thoracic kyphosis)
  • 頭部前方位(forward head posture)

このパターンでは、骨盤が前に倒れるために腰椎が過伸展し、バランスを取るため胸椎が後弯・頭部が前に出ます。
結果、体幹全体で「S字が強調された姿勢」になります。


② 筋バランスの崩れ

Kendallの筋機能バランス理論に基づくと、以下のような傾向があります。

機能短縮筋(tight)弱化筋(weak)
骨盤前傾をつくる筋腸腰筋、大腿直筋、脊柱起立筋臀筋群、ハムストリングス、腹直筋、腹横筋
胸郭後傾を助長する筋大胸筋、広背筋下部僧帽筋、前鋸筋
頭部前方位に関与する筋胸鎖乳突筋、僧帽筋上部頸深層屈筋(longus colli)

このアンバランスが「骨盤-胸郭-頭部」の協調性を崩し、
腰椎に過伸展ストレスが集中するメカニズムを生みます。


③ 機能的な問題点

  • 腰椎椎間関節への圧縮負荷増大 → 慢性的な腰痛(Panjabi, 1992)
  • 腹圧低下による体幹支持の不安定化 → 骨盤底筋・腹横筋の機能低下(Hodges & Gandevia, 2000)
  • 胸郭後傾による呼吸パターン変化 → 吸気時に胸式優位、横隔膜の可動性低下

これらが複合して、腰痛や姿勢疲労、さらには骨盤臓器下垂のリスクまで高める可能性があります。

評価と運動療法

① 評価ポイント

  • 立位でのASIS-PSIS角度(正常6〜13°)
  • 骨盤と胸郭の相対位置(rib-pelvis angle)
  • 呼吸時の胸郭拡張の左右差
  • 股関節伸展時の腰椎代償

② 運動療法の考え方(理学療法+ピラティス)

  • 腸腰筋リリースと股関節伸展可動域の再獲得
  • 骨盤底筋+腹横筋の協調的収縮(腹圧再教育)
  • 胸郭可動性の改善(胸椎伸展・前鋸筋活性)
  • 動的姿勢再教育(ローリング、プランク、デッドバグなど)

ピラティスでは「ニュートラル・スパイン」を再学習する過程で、
カイホロードシス特有の“骨盤過前傾パターン”の修正に有効です。


参考文献

  1. Kendall FP et al. Muscles: Testing and Function with Posture and Pain, 5th ed. Lippincott Williams & Wilkins, 2005.
  2. Panjabi MM. The stabilizing system of the spine. J Spinal Disord, 1992.
  3. Hodges PW, Gandevia SC. Activation of the human diaphragm during a repetitive postural task. J Physiol, 2000.
  4. Neumann DA. Kinesiology of the Musculoskeletal System, 3rd ed. Elsevier, 2017.
  5. Sahrmann SA. Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes, Mosby, 2002.

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