はじめに
「反り腰を直したい」「姿勢をよくしたい」「腰痛をなくしたい」
そう思って筋トレやストレッチを頑張っている人は多いですよね。
でも、どれだけ頑張っても改善しない人がいます。
その理由は――実は「腸腰筋(ちょうようきん)」がうまく働いていないからかもしれません。
腸腰筋は、姿勢や動きの“土台”をつくる超重要な筋肉。
今回は理学療法士の視点から、腸腰筋がどんな筋肉で、どうすればうまく使えるのかをやさしく解説します。
腸腰筋ってどこにあるの?
腸腰筋は、お腹の奥の方にある深い筋肉で、実は3つの筋肉の集合体です。
- 大腰筋(だいようきん):背骨(腰の骨)から太ももの骨まで伸びている
- 腸骨筋(ちょうこつきん):骨盤の内側から太ももにつながっている
- 小腰筋(しょうようきん):人によってある・ないが分かれる小さな筋
このうち、大腰筋は「背骨から太もも」へ直接つながる唯一の筋肉。
つまり“上半身と下半身をつなぐ一本の芯”なんです。
腸腰筋のすごい働き
「股関節を曲げる筋肉」と思われがちですが、それだけじゃありません。
腸腰筋は、
- 立っているときに骨盤を支える
- 座っているときに姿勢を保つ
- 歩くときに足を前に出す前に骨盤を安定させる
といった、“姿勢を守る筋肉”でもあります。
さらに、深部で腹横筋・多裂筋・横隔膜などと協調して「体幹のコア」をつくっています。
だから腸腰筋がうまく使えないと、コアが抜けて腰や背中が不安定になってしまうのです。
腸腰筋と姿勢の関係
実は、姿勢のタイプによって腸腰筋の働き方がまったく変わります。
| 姿勢タイプ | 腸腰筋の状態 | よくある症状 |
|---|---|---|
| 反り腰(カイホロードシス) | 短く・固い | 腰痛、太もも前のハリ |
| スウェイバック | 弱く・使えていない | 骨盤後傾、猫背、ポッコリお腹 |
| ストレートネック・猫背 | 働きが遅くなる | 背中のこり、肩こり |
つまり、腸腰筋は姿勢タイプのバロメーターのような存在。
どのタイプでも“バランスの崩れ”があると、他の筋肉が代わりに頑張ってしまい、腰や肩に負担がかかります。
動きの中でも大活躍!
歩く、階段を上る、座る――すべての動きに腸腰筋は関わっています。
- 歩くとき:足を前に出す前に骨盤を安定させる
- 階段を上るとき:太ももを持ち上げながら体幹を支える
- 座るとき:骨盤を立てて姿勢を維持
腸腰筋が働かないと、骨盤が後ろに倒れたり、腰が丸まって座り姿勢が崩れたりします。
じゃあどうすれば腸腰筋を使えるようになるの?
ポイントは、「鍛える」よりも「感じて使う」。
ピラティスではこの“感じる力”をとても大事にしています。
どの動きも、腹筋よりも「脚が体幹に引き寄せられる」感覚が大事です。
これが、腸腰筋がちゃんと働いているサイン。
腸腰筋が目覚めると何が変わる?
✅ 姿勢が自然に整う
✅ 腰の重だるさが減る
✅ 歩くときに体が軽く感じる
✅ 呼吸が深くなる
腸腰筋が使えるようになると、体の「芯」が安定して、無駄な力みが減っていきます。
結果的に、姿勢も呼吸も動きも、すべてが楽になるんです。
おわりに
腸腰筋は、見えないけれど本当に大事な筋肉。
鍛えるというより、整えて・感じて・つなげることがポイントです。
もしあなたが「姿勢を変えたい」「腰の不調を減らしたい」と思っているなら、
まずは今日から“腸腰筋を感じる”エクササイズを始めてみてください。
きっと身体の芯が変わります。
参考文献
- Neumann, D. A. Kinesiology of the Musculoskeletal System, 3rd ed., Elsevier, 2017.
- Richardson, C. A. et al. Therapeutic Exercise for Lumbopelvic Stabilization, Churchill Livingstone, 2004.
- Kendall, F. P. et al. Muscles: Testing and Function, Lippincott Williams & Wilkins, 2005.






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