呼吸が浅い人に共通する姿勢の特徴と、ピラティスでの改善ポイント

ぴらてぃすのお勉強

「最近、呼吸が浅い気がする」「深呼吸しても胸の上しか動かない」
そんなふうに感じる方はいませんか?

実は“呼吸の浅さ”には、共通する「姿勢のクセ」があります。
そしてそれを整えるのに、ピラティスはとても効果的です。
理学療法士の視点から、呼吸と姿勢の関係を少し掘り下げてみましょう。


■ 呼吸が浅い人の姿勢には共通点がある

呼吸が浅い人の多くにみられる姿勢的特徴は、以下の3つです。

1️⃣ 猫背(円背)姿勢
背中が丸くなり、胸郭(肋骨を含むかごのような骨格)が後方に傾くことで、肋骨の前後方向の動きが制限されます。特に「胸郭拡張」の制限が大きく、息を吸っても胸の前が広がらない感覚になります。

2️⃣ 反り腰+肋骨前突
逆に腰が反って肋骨が前に出る姿勢も、呼吸を浅くします。これは“胸式呼吸の過剰化”とも呼ばれ、腹部や横隔膜がうまく使えず、肩や首の筋肉(斜角筋や胸鎖乳突筋)で呼吸を補うパターンです。

3️⃣ 肩甲骨の位置異常
肩甲骨が外側に広がり(外転)、上方に傾いていると、肋骨の動きが制限されます。前鋸筋や小胸筋などが硬くなりやすく、吸気時に胸が動かない「胸郭拘束型呼吸」になりやすいのです。


■ 姿勢と呼吸は神経でもつながっている

呼吸は単なる筋肉の動きではなく、「姿勢制御」とも深く関係しています。
たとえば横隔膜は呼吸だけでなく、体幹の安定(腹圧コントロール)にも関与します。

ある研究では、呼吸筋の活動と姿勢保持筋の活動が同時に起こることが示されています(Hodges & Gandevia, 2000)。
つまり、呼吸が浅くなる=体幹の働きも低下しやすくなる、ということ。


■ ピラティスが呼吸改善に効果的な理由

ピラティスでは、呼吸を「意識的にコントロール」しながら動くことが特徴です。
これは、無意識化していた浅い呼吸を再教育するプロセスとも言えます。

特にピラティスの呼吸(胸式ラテラル呼吸)は、
・肋骨の横方向の動きを引き出す
・横隔膜と腹横筋を連動させる
・背骨の動きと呼吸を統合する
といった点で、呼吸筋と姿勢筋を同時にトレーニングします。

たとえば、ローリングライクアボールスパインストレッチなどのエクササイズでは、呼吸とともに胸郭が柔らかく動くよう導かれます。
その結果、胸郭の可動性が上がり、自然に「深い呼吸ができる体」に変化していくのです。


■ 呼吸を深めるピラティスの実践ポイント

1️⃣ 肋骨の動きを感じる
仰向けで両手を肋骨に添え、息を吸いながら横方向に肋骨が広がるのを感じます。
「前に膨らませる」より「横に広げる」意識がポイントです。

2️⃣ 息を吐く時は、お腹を軽く内側へ
息を吐くとき、腹横筋が働いてお腹が自然に内側に引かれます。
このときお腹を「へこませよう」と意識しすぎないこと。あくまで自然に。

3️⃣ 姿勢を正す前に、背骨を整える
いきなり姿勢を“良く”しようと胸を張ると、逆に肋骨前突になり呼吸が浅くなります。
背骨を上下に伸ばすような感覚で姿勢を整えるのが理想です。


■ 呼吸が変わると、体も心も変わる

呼吸は「自律神経の入り口」とも言われます。
深い呼吸ができるようになると、副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなります。
また、姿勢改善や肩こり、頭痛の軽減につながるケースも多いです。

ピラティスで呼吸を見直すことは、姿勢を変え、体を整え、そして心の安定にもつながる。
だからこそ、浅い呼吸を感じたときこそ、まずは自分の姿勢に目を向けてみましょう。


【参考文献】

  • Hodges PW, Gandevia SC. Changes in intra-abdominal pressure during postural and respiratory activation of the human diaphragm. J Appl Physiol. 2000;89(3):967–976.
  • Lee LJ, Chang AT, Coppieters MW, et al. Relationship between resting scapular posture and movement with breathing and shoulder movement in healthy subjects. Man Ther. 2010;15(6):540–545.
  • Kiesel KB, Uhl TL, Underwood FB, et al. Measurement of lumbar multifidus muscle contraction with rehabilitative ultrasound imaging. Man Ther. 2007;12(2):161–166.
  • Calatayud J, et al. The role of core muscle activation in breathing and posture control: A systematic review. Phys Ther Sport. 2022;53:178–186.

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