はじめに
心臓病予防には「運動」が重要ですが、実は呼吸法も心臓の健康に大きく影響します。
ピラティスでは、深い胸式呼吸や腹式呼吸を意識することで、自律神経を整え、心拍数や血圧を安定させる効果が期待できます(Guimarães et al., 2012)。
本記事では、理学療法士の視点から、心臓を守るためのピラティス呼吸の仕組みと効果を初心者向けにわかりやすく解説します。
心臓と呼吸の関係
自律神経と心拍数
呼吸は自律神経と密接に関わっています。
- 交感神経:心拍数上昇、血圧上昇
- 副交感神経:心拍数低下、血圧安定
深い呼吸を意識すると副交感神経が優位になり、心臓にかかる負担を軽減できます(Woramontri et al., 2024)。
呼吸の浅さが心臓に与える影響
猫背や巻き肩で胸郭が圧迫されると、呼吸が浅くなり酸素摂取量が減少。
酸素不足は心臓への負担を増やすため、胸郭の可動性を改善することが重要です(Tarnas et al., 2024)。
ピラティス呼吸の特徴
胸式呼吸と腹式呼吸
ピラティスでは「胸式呼吸」と「腹式呼吸」を使い分けます。
- 胸式呼吸:肋骨を横に広げ、肺全体に空気を取り込む
- 腹式呼吸:横隔膜を下げて下腹部まで空気を送る
この呼吸法により、酸素供給量の最大化と自律神経のバランス改善が期待できます(Fernández-Rodríguez et al., 2019)。
呼吸と姿勢の連動
ピラティスでは呼吸に合わせて背骨や肩の動きをコントロールします。
胸郭と体幹が安定することで、呼吸がスムーズになり、日常生活での運動効率も上がります(Guimarães et al., 2012)。
研究で示されるピラティス呼吸の効果
- 心拍数安定:深い呼吸により安静時心拍数が低下(Guimarães et al., 2012)
- 血圧改善:12週間のマットピラティスで収縮期・拡張期血圧が低下(Woramontri et al., 2024)
- 心肺機能向上:VO₂ maxや換気効率が改善(Fernández-Rodríguez et al., 2019; Tarnas et al., 2024)
これらの結果は、ピラティス呼吸が心臓病予防に寄与することを示しています。
まとめ
ピラティス呼吸は、心臓病予防において、
- 自律神経のバランスを整える
- 酸素供給量を最大化する
- 日常の運動効率を高める
という重要な役割を果たします。
初心者でも無理なく取り入れられる簡単エクササイズから始め、毎日の習慣にすることがポイントです。
参考文献
- Fernández-Rodríguez R, et al. Pilates Method Improves Cardiorespiratory Fitness. PMC, 2019. リンク
- Guimarães GV, et al. Pilates in heart failure patients: a randomized controlled trial. International Journal of Cardiology, 2012. リンク
- Woramontri C, et al. Effect of Mat Pilates Training on Blood Pressure. MDPI, 2024. リンク
- Tarnas M, et al. Effects of Pilates Training on Cardiorespiratory Functions. PMC, 2024. リンク



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