ランナーの膝の内側痛「鵞足炎」、実は股関節の弱さが原因かも?

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ランナーに多いケガのひとつに「鵞足炎(がそくえん)」があります。
膝の内側がズキズキ痛むこのトラブル、走りすぎやストレッチ不足が原因と思われがちですが、実は「股関節の安定性不足」が大きく関係しています。

今日は理学療法士の視点から、なぜ鵞足炎が起こるのか、そしてピラティスを使ってどう改善できるのかを、分かりやすくお話ししますね。


鵞足炎ってどんなケガ?

「鵞足」とは、3本の筋肉(縫工筋・薄筋・半腱様筋)が膝の内側で合わさって付着する場所のこと。見た目がガチョウの足のように広がっているので「鵞足」と呼ばれます。

ランナーが長い距離を走ると、この部分に摩擦や引っ張りのストレスがかかりやすくなり、炎症を起こして痛みが出るのが「鵞足炎」です。

「走っていると膝の内側が痛む」
「階段を下りるとズキッとする」
そんな症状がある方は要注意です。


鵞足炎は「膝」だけが悪いわけじゃない

「膝が痛いんだから膝の問題」と思いがちですが、実際はそう単純ではありません。

ランニング中、膝の位置をコントロールしているのは股関節の筋肉たちです。股関節が安定していないと、膝が内側に倒れ込んでしまい、その結果として鵞足部に過剰な負担がかかります。

特に弱くなりやすいのはこの3つ:

  • 腸腰筋(骨盤を正しい位置に保ち、脚を前に出す)
  • 内転筋群(脚の内側でバランスをとる)
  • 深層外旋六筋(股関節を後ろから支える小さな筋肉たち)

「膝の痛みの裏に、実は股関節の弱さが隠れている」
これが鵞足炎を理解するポイントなんです。


なぜ股関節のインナーマッスルが大事?

腸腰筋

体の奥深くにある筋肉で、走るときに脚を前に運ぶ役割を持ちます。腸腰筋がしっかり働くと、骨盤が安定して姿勢も崩れにくくなります。

内転筋群

太ももの内側にある筋肉です。内転筋は「弱い」というより、うまく使えていないことが多い筋肉。ここが働かないと、膝が内側に流れて鵞足部にストレスが集中します。

深層外旋六筋

聞き慣れない名前ですが、股関節の後ろで小さく支えている筋肉たちです。膝のねじれを防ぎ、ブレない走りを作ってくれます。

つまり「腸腰筋・内転筋・外旋筋」が協力して働くことで、股関節が安定し、膝の内側に余計な負担がかからなくなるんです。


ピラティスでどう改善できる?

ここで役立つのが「ピラティス」です。

ピラティスは、体の深い筋肉(インナーマッスル)を意識的に働かせながら、正しい姿勢や動きを身につけていくエクササイズです。単なる筋トレと違って、**「どうやって動くか」**にフォーカスするのが特徴です。

例えば、マットの上で骨盤をニュートラルに保ちつつ脚を動かす練習をすると、腸腰筋や内転筋を正しく使う感覚が身につきます。
また、バランスを崩しやすい姿勢で深層外旋六筋を働かせる練習をすることで、股関節がしっかり安定してきます。

この「股関節が安定した状態で走れるようになる」ことが、鵞足炎の改善・再発予防につながるんです。


まとめ

  • 鵞足炎は「膝のケガ」だけど、原因は股関節の安定性不足にある
  • 腸腰筋・内転筋・深層外旋六筋を鍛えてバランスを整えることが重要
  • ピラティスはそれらを意識的に使えるようになる最適な方法
  • ランナーにこそ「走るためのピラティス」が必要

もし今、膝の内側に痛みを感じている方は、膝だけをケアするのではなく「股関節を安定させるエクササイズ」をぜひ取り入れてみてください。

「走るための体づくり」としてピラティスを始めるのは、とてもおすすめですよ!

参考文献

  1. Fredericson M, Wolf C. Iliotibial band syndrome in runners: innovations in treatment. Sports Med. 2005;35(5):451-459.
  2. Nakase J, et al. Diagnosis and treatment of pes anserinus tendinitis/bursitis. Asia-Pacific Journal of Sports Medicine, Arthroscopy, Rehabilitation and Technology. 2015;2(3):106-111.
  3. Latey P. The Pilates method: history and philosophy. Journal of Bodywork and Movement Therapies. 2001;5(4):275-282.

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