ランナー腰痛の原因は「腰」じゃない!?胸椎・コア・股関節に注目しよう

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こんにちは、理学療法士のKEIです。
ランニングを楽しんでいる方の中には、「走ると腰が痛い」という悩みを抱えている方が少なくありません。特に長距離ランナーやマラソン愛好者に多く、「腰痛があるから練習が続けられない」「走るのが怖くなる」と相談を受けることもあります。

多くの方は「腰が痛い=腰が悪い」と考えてしまいますが、実は腰痛の原因は腰そのものではないケースが多いんです。腰は「被害者」であって「犯人」ではないことがしばしば。

では何が関わっているのか?
実際に多いのは次の3つです。

  1. 胸椎(背中)の可動性低下
  2. コア(体幹)の安定性不足
  3. 股関節の分離運動ができていない

この3つを整理して見ていきましょう。


1. 胸椎の可動性低下と腰痛の関係

胸椎とは背骨の中で胸の高さにある12個の骨を指します。ここは「回旋(ひねり)」や「伸展(反らす)」が得意で、ランニング中は腕振りや上半身のリズムを支える重要な部分です。

しかし、デスクワークやスマホ習慣で背中が硬くなっている人はとても多いです。胸椎が動かないと、本来胸椎で担うべき「ひねり」を腰椎が代わりに行うことになります。

腰椎は本来「安定」を担う部位。過剰にひねられると椎間関節や椎間板に負担がかかり、腰痛のリスクが一気に高まります。

👉 胸椎が硬い → 腰で代償 → 腰痛につながる
この流れは臨床でも本当に多く見られるパターンです。


2. コアの安定性不足

次に注目すべきは「コア」。腹横筋、多裂筋、横隔膜、骨盤底筋といった深層の筋群を総称して「インナーユニット」や「パワーハウス」と呼びます。

ランニングでは毎回の着地で体重の数倍の衝撃が体に加わります。その衝撃を吸収し、腰椎や骨盤を安定させるのがコアの役割です。

しかし、コアが使えていないと腰回りがグラグラしてしまい、着地や体幹のねじれの力がダイレクトに腰へ。これが「走ると腰がズシンと響く」という感覚の原因になることもあります。

つまり腰痛の裏には「コアが働いていない」ことが隠れていることが多いのです。


3. 股関節の分離運動ができない

股関節はランニングの推進力を生み出す大きな関節。ですが、股関節と骨盤・腰椎の動きを分けられない人はとても多いです。

例えば「足を後ろに伸ばす動作」。本来は股関節の伸展が起きるべきですが、股関節が硬い人は骨盤ごと後ろに傾けてしまいます。結果として腰椎が反ってしまい、負担が集中します。

👉 股関節が硬い or 分離できない
👉 腰で代償する
👉 腰痛へ

こうした「分離運動の苦手さ」が、慢性的な腰痛の背景にあるケースは多いのです。


4. ピラティスがランナー腰痛対策になる理由

ここで「じゃあどうすればいいの?」という疑問が出てきますよね。
その一つの答えが ピラティス です。

ピラティスはもともとリハビリの要素を多く含み、体を正しく使うためのエクササイズ体系です。特に「胸椎」「コア」「股関節」という腰痛に関係する三本柱を、バランスよく鍛えられる点が大きな魅力です。

胸椎の可動性改善

ピラティスでは「スパインツイスト」「スワン」など、背骨一つひとつを動かすエクササイズがあります。これにより胸椎がしなやかに動き、腰が代償する必要が減ります。

コアの活性化

ピラティス最大の特徴は「コアを意識しながら動く」こと。呼吸とともに腹横筋や骨盤底筋を自然に使う習慣がつき、ランニング中でも腰を守れる体幹の安定性が養われます。

股関節の分離運動の習得

ピラティスでは「ヒップリフト」「レッグスライド」など、股関節を独立して動かす練習が豊富です。これにより「股関節で動き、腰は安定する」という理想的なパターンが身につきます。


5. ランナー腰痛改善のまとめ

ランニングに伴う腰痛は、決して「腰だけの問題」ではありません。

  • 胸椎の動きが悪い
  • コアが安定しない
  • 股関節の分離ができない

この3つの要素が絡み合って、腰に負担をかけているケースが非常に多いです。

そして、この3つをバランスよく整えられるのがピラティス。
ランニングのパフォーマンスを上げつつ、腰痛を予防できる「二刀流」のエクササイズといえます。

腰痛に悩んでいるランナーさん、ぜひ「腰を攻める」のではなく「胸椎・コア・股関節を整える」という視点で体を見直してみてください。

きっと走るのがもっと快適に、もっと楽しくなるはずです。


参考文献

  • Sahrmann SA. Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes. Mosby, 2002.
  • McGill SM. Low Back Disorders: Evidence-Based Prevention and Rehabilitation. Human Kinetics, 2016.
  • Schache AG, et al. “The coordination of the thorax and pelvis during running and walking: three-dimensional kinematics.” Clin Biomech. 2002;17(6):536–543.
  • Powers CM. “The influence of abnormal hip mechanics on knee injury: a biomechanical perspective.” J Orthop Sports Phys Ther. 2010;40(2):42–51.
  • Wells C, Kolt GS, Bialocerkowski A. “Defining Pilates exercise: A systematic review.” Complement Ther Med. 2012;20(4):253–262.

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