こんにちは、理学療法士のkeiです。
クライミングをしていて「あと少しなのに指がもたない…」と感じたことはありませんか?
「保持力=握力」だと思われがちですが、実際には全身の使い方が大きく関わっています。
クライマーの保持力を支えているのは、背中や肩甲骨、そして体幹の安定性。
そしてこの全身をつなげて動かす感覚を養ううえで、ピラティスはとても有効です。



背中の筋肉が握力を助けてくれる
クライミング中にホールドを保持するとき、最前線で働くのは前腕ですが、その力を支えるのが背中の筋肉です。
- 広背筋:体を引きつけ、握力の負担を軽減
- 僧帽筋:肩甲骨の安定と腕の動きを調整
- 前鋸筋:肩甲骨の位置をコントロールし、力を壁に伝える
これらの筋群が協調して動くことで、腕の力を効率的に使えます。
つまり、「握る力」を「全身で支える力」に変えるのが背中の働きなのです。
コアの安定性が保持力の持久力を決める
次に重要なのが**体幹の安定性(コアコントロール)**です。
体幹が不安定なまま腕だけで登ると、手指に過剰な負担がかかり、早い段階で限界がきます。
一方で、腹横筋や多裂筋などの深層筋が働き、体幹が安定すると、腕や肩の筋肉が効率よく動けるようになります。
結果として、握力を使いすぎずにホールドをキープできる。
この「体の中心を安定させて末端を自由に動かす」感覚は、まさにピラティスの根本的な考え方です。
足と体幹をつなぐ“力のルート”
保持力を高めるには、腕だけでなく足の使い方も大切です。
足裏や股関節で体を支え、その力をコアを通して手に伝える。
この“力のルート”がスムーズにつながることで、体全体でホールドを保持できます。
ピラティスではこの「運動連鎖(キネティックチェーン)」を意識的に整える練習を行うため、クライマーにとっても有益です。
ピラティスが保持力を底上げする理由
ピラティスは単に柔軟性や姿勢を整えるだけでなく、**身体感覚の再教育(モーターコントロール)**を目的とした運動です。
以下の点で、保持力のベースを作ることができます。
- 体幹の安定化:腹横筋・骨盤底筋・多裂筋など、深層筋を協調させることで、クライミング中の姿勢保持が安定。
- 肩甲骨の動的安定:前鋸筋や僧帽筋下部線維を使う練習が多く、肩周囲の力の伝達効率が上がる。
- 全身の連動性の向上:呼吸と共に背骨や肋骨を動かすことで、手足の動きがスムーズになる。
これにより、クライミング時に「指の力に頼らない全身的な保持力」が育ちます。
握力だけに頼らない登り方へ
クライミングでは「どれだけ握力を残せるか」が勝負ですが、それは単に指を鍛えることではありません。
背中・肩甲骨・コア・下半身が協調して働くことで、指先の負担を減らし、効率よく力を伝えることができます。
ピラティスでその基盤を整えることは、握力の“使い方”そのものを変える一助になります。
結果として、保持力は長持ちし、より安定したクライミングが可能になるのです。
【まとめ】
- 握力だけでは保持力は続かない
- 背中や肩甲骨の安定が力の伝達を助ける
- コアの安定が腕の負担を軽減する
- 足から腕までをつなぐ全身連動が重要
- ピラティスはこの「全身の協調性」を高める最適な方法
クライミングの保持力を上げたいなら、握力トレーニングに加えて身体の使い方そのものを整えることが大切。
ピラティスで「支える」「つなぐ」「安定させる」力を育てることが、その第一歩です。
【医学的参考文献】
- Schöffl V, et al. Sports Medicine. 2006;36(6):529–545.
- Quaine F, et al. Journal of Sports Sciences. 2003;21(8):693–701.
- MacLeod DA, et al. European Journal of Applied Physiology. 2007;100:743–751.
- Emery K, De Serres SJ, McMillan A, Côté JN. Clinical Biomechanics. 2010;25(6):543–548.



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