「体幹」=お腹だけじゃない!
ピラティスやトレーニングでよく耳にする「コア」や「体幹」。
実はそれ、「お腹の筋肉」だけのことではありません。

インナーマッスルとかコアエクササイズとかって結局??
体幹が強いとかどういうこと??
体幹とは、横隔膜・腹横筋・骨盤底筋群・多裂筋などの**深い部分の筋肉(インナーユニット)**が連携して働くことで、私たちの体を内側から支える仕組みのことです。
まるでお腹の中にある「空気のクッション(腹圧)」を上手くコントロールして、背骨を安定させているようなものなんです。
インナーユニットってどんな筋肉?
4つの筋肉がチームのように働いています。
- 上:横隔膜(呼吸の主役)
- 下:骨盤底筋群(骨盤の底で臓器を支える)
- 前:腹横筋(お腹の最も深い筋肉)
- 後:多裂筋(背骨を1本ずつ安定させる)
この4つが筒状になって腹腔を取り囲み、呼吸と連動して姿勢や動きを安定させるのが特徴です。
呼吸とコアの深い関係
呼吸をするとき、私たちは意識せずにコアを使っています。
- 吸うとき:横隔膜が下がり、腹横筋が軽く張ってバランスを取る
- 吐くとき:横隔膜が上がり、腹横筋と骨盤底筋群がしっかり収縮する
この“呼吸のリズム”によって、自然と腹圧がコントロールされ、腰や骨盤が安定するのです。
つまり、「呼吸=体幹トレーニング」と言っても過言ではありません。
なぜピラティスでは胸式呼吸なの?
ピラティスでは「胸式呼吸(後側方呼吸)」を強調します。
これは、お腹の奥の筋肉を使いながら呼吸を行うためのテクニックです。
- お腹を凹ませたままでも呼吸がしやすい
- 横隔膜と腹横筋が協調して働く
- 背中や肋骨の動きを引き出せる
胸式呼吸を使うことで、腹圧を安定させながら動くことができ、腰への負担を減らし、姿勢も整っていきます。
特にピラティスでは、動きながら安定を保つ“ダイナミック・スタビリティ”を重視するため、この呼吸法が理にかなっているんです。
理学療法の視点から見たピラティスの効果
慢性的な腰痛の人では、腹横筋や多裂筋の働きが遅れたり、薄くなったりしていることが研究で報告されています。
(Hides et al., 1996/Hodges & Richardson, 1996)
ピラティスのように呼吸と深層筋を連動させてトレーニングすることで、
- 腰痛の再発予防
- 姿勢の安定化
- 背骨・骨盤の機能的な動き
といった改善が期待できます。
単に筋トレではなく、“呼吸を通した再教育”という点が、ピラティスが理学療法の世界でも注目されている理由です。
まとめ
ピラティスの「胸式呼吸」は、腹横筋・骨盤底筋・横隔膜・多裂筋が協調して働くための“スイッチ”のようなもの。
体の芯から安定をつくるには、まず呼吸から見直すのが近道です。
次にピラティスをするときは、
背中の肋骨が広がる感覚を味わいながら、
お腹の奥の“支え”を感じてみてください。
それこそが、あなたの「本当の体幹」です。
参考文献
- Hodges PW, Richardson CA. Spine. 1996;21(22):2640–2650.
- Hodges PW, Gandevia SC. J Physiol. 2000;522(1):165–175.
- Hides JA et al. Spine. 1996;21(23):2763–2769.
- Wells C et al. Complement Ther Med. 2012;20(4):253–262.
- Neumann DA. Kinesiology of the Musculoskeletal System. 3rd ed. Elsevier; 2017.






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