私たちは「動く」とき、筋肉だけでなく視覚からの情報を常に使っています。
ピラティスでは「身体を感じる」ことが重視されますが、実は**“見る”ことが姿勢や動きに深く関わっている**のです。
理学療法の現場でも、視覚と運動制御の関係は再注目されています。
視覚は「姿勢制御のセンサー」
姿勢を保つための感覚入力には主に3つがあります。
- 固有感覚(筋・関節からの情報)
- 前庭感覚(内耳からの平衡情報)
- 視覚情報(外界の位置や動きを把握)
特に視覚は、身体の空間的な位置を認識するために欠かせません。
例えば、ピラティス中に「鏡を見ながら動く」ことで動作の修正がしやすくなるのは、視覚フィードバックによって身体の位置誤差を補正しているからです。
視覚と体幹のつながり
最新の神経科学では、視覚情報が頸部や体幹筋群の反応に影響を与えることが知られています。
目線の方向を変えるだけで、深部頸筋や多裂筋の活動が変わることが報告されています(Blouin et al., 2015)。
つまり、
「どこを見るか」で「どの筋肉が働くか」が変わる。
ピラティスで「目線を遠くに」と指示するのは、単に姿勢を整えるためではなく、神経系を通じて筋活動を誘導する意味があるのです。
視覚とボディイメージ
視覚は「自分の身体の地図(Body Schema)」を形成する上でも重要です。
ストレートネックや猫背などの姿勢変化は、視覚的な空間認識のズレと関係する場合があります。
ピラティスで「視線を正面に」「頭頂を引き上げる」と意識することで、身体イメージが再構築され、自然と姿勢が整うのです。
視覚を活かしたピラティスのコツ
- 目線を一定に保つ
→ 動作中に視線が泳がないようにすることで、体幹の安定性が増します。 - 鏡を活用する
→ フォームチェックは外的フィードバックとして有効。 - 目を閉じて行う練習も
→ 視覚を遮断することで固有感覚の感度を上げられます。
(上級者におすすめ)
まとめ
- 視覚は「姿勢」「体幹」「ボディイメージ」を支える重要な感覚。
- ピラティスでは「目線の使い方」が動きを整える鍵になる。
- 鏡を見る・目を閉じるなど、視覚を意識的に使う練習を取り入れると効果が上がる。
参考文献
- Blouin, J. S., et al. (2015). Visual feedback and postural control. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 53, 224–237.
- Ivanenko, Y. P., & Gurfinkel, V. S. (2018). Human postural control. Frontiers in Neuroscience, 12, 171.
- Gallagher, S. (2005). How the Body Shapes the Mind. Oxford University Press.



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