「心臓が固くなる」と聞くと、なんだか怖い話のように思えますよね。
でも実はこれは医学的に使われる表現で、「心臓が伸び縮みしにくくなる」=「拡張性(やわらかさ)」が失われることを意味します。
そしてこの“変化”は、高齢者だけの問題ではありません。
30代から運動をしない生活を続けることで、少しずつ心臓の柔軟性が失われていく可能性があるのです。
心臓の“やわらかさ”とは?
心臓はポンプのように、収縮と拡張をくり返して全身に血液を送っています。
拡張期にしっかりと広がる(=やわらかい)ことで、効率よく血液を取り込むことができます。
しかし、加齢や運動不足、生活習慣の乱れが続くと、心筋や血管の弾力が少しずつ低下していきます。
この状態を専門的には「左室拡張能低下」や「左室スティフネス(硬さ)」と呼びます。
なぜ運動しないと心臓が固くなるの?
近年の研究では、
・長時間座りっぱなしの生活
・運動習慣がほとんどない中年以降の人
において、心臓の拡張性が低下しやすいことが報告されています。
実際に、アメリカ・テキサス大学の研究(Howdenら, Circulation, 2018)では、
週4〜5回の有酸素運動を2年間継続した人は、心臓の硬さが改善したという結果が出ています。
つまり、運動不足によって“固くなる”のは可逆的、やり直せる変化でもあるのです。
30代からの「心臓を守る運動習慣」
30代は、仕事や家庭で忙しく「座る時間」が増えがちな年代です。
しかし、この時期こそ心臓を“しなやか”に保つ生活を意識しましょう。
ポイントは次の3つです。
- 1日30分、週4回以上の中強度運動(速歩・軽いジョグ・サイクリングなど)
- 1時間座ったら3分立ち上がって動く(血流を保つ)
- 呼吸を深く使うエクササイズ(ピラティスやストレッチ)
これらはすべて、心臓の拡張性と血管の柔軟性を守ることにつながります。
心臓の“硬さ”は感じにくい
怖いのは、心臓が固くなっても自覚症状がほとんどないということ。
息切れや疲れやすさを感じたときには、すでに機能が落ちていることもあります。
だからこそ、「症状が出てから」ではなく、
30代から予防の意識を持つことがとても大切です。
まとめ
運動をしていない30代の心臓は、
見た目には元気でも、内側では少しずつ“しなやかさ”を失っているかもしれません。
でも大丈夫。
心臓の柔軟性は、運動で取り戻すことができます。
まずは「1日30分のウォーキング」から。
そして深い呼吸と姿勢を整えるピラティスも、心臓をやさしく動かす最高のツールです。
参考文献
- Howden EJ, Sarma S, Lawley JS, et al. Reversing the Cardiac Effects of Sedentary Aging in Middle Age—A Randomized Controlled Trial. Circulation. 2018. PMID: 29311053
- American College of Cardiology. Exercise Benefits in CVD: Key Points. 2023.
- Harvard Gazette. Study finds too much sitting hurts the heart. 2024.
- Johns Hopkins Medicine. Why Exercise Isn’t Enough to Keep Your Heart Healthy.







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