はじめに
ピラティスでもリハビリでもよく聞く「腹圧を高めて!」という指導。
でも実際にやってみると「お腹をへこませるの?」「息を止めるの?」と混乱する方が多いですよね。
現場で見ていると、腹圧が入らない人にはある共通パターンが見えてきます。
今日は理学療法士の視点から、その原因と正しい感覚づくりをお伝えします。
「腹圧を高める」とは何か
腹圧とは、横隔膜・腹横筋・骨盤底筋・多裂筋によって作られる内臓を包む“空気の風船”のような圧力です。
この圧が高まることで、腰椎を支え、姿勢が安定し、動きがスムーズになります。
よくある誤解は「腹筋を固めること=腹圧」だと思っていること。
実際には、お腹を膨らませながらも、内側に支える力を作るという繊細なコントロールが必要です。
腹圧がうまく入らない人の3つの共通点
①お腹を“へこませよう”としている
→ 呼吸のたびに腹圧が抜けてしまいます。
「へこませる」より「お腹を薄くする」イメージが◎。
②肋骨が硬くて横隔膜が下がらない
→ 呼吸の主役である横隔膜が動かないと、腹圧も作れません。
胸郭の可動性を高めるストレッチや呼吸エクササイズが有効です。
③骨盤底筋を意識できていない
→ 骨盤底が緩むと、腹圧は下に逃げます。
「おしっこを途中で止めるような感覚」で骨盤底を軽く締めると、下から支えができます。
理学療法士の視点で見る「腹圧と動作」
腹圧は静的に高めるものではなく、「動きながら変化するもの」です。
たとえば立ち上がる、歩く、腕を上げる…すべての動きに合わせて腹圧は微調整されています。
ピラティスでの呼吸練習は、この腹圧の自動制御を再教育しているとも言えます。
ピラティスで意識したいポイント
- 「息を止めずにお腹の風船を保つ」
- 「呼吸と骨盤底筋の連動を感じる」
- 「強く締めるより、ふくらませて支える」
この3つを意識するだけで、腹圧が安定し、腰痛予防や姿勢改善の効果も高まります。
まとめ
腹圧をうまく高められない人の多くは、「力を入れよう」としすぎています。
本来の腹圧は、**呼吸とともに変化する“しなやかな支え”**です。
ピラティスで呼吸とコアを整えることが、腹圧コントロールの第一歩になります。
参考文献
- Hodges PW, Gandevia SC. Activation of the human diaphragm during a repetitive postural task. J Physiol. 2000;522 Pt 1:165–175.
- Sapsford R, Hodges PW. Contraction of the pelvic floor muscles during abdominal maneuvers. Arch Phys Med Rehabil. 2001;82(8):1081–1088.
- Lee D, Hodges P, et al. Understanding functional abdominal wall dynamics. Manual Therapy. 2015;20(1):3–10.
- Neumann DA. Kinesiology of the Musculoskeletal System. 3rd ed. Elsevier; 2017.




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